地下室というと、「特別な構造を追加して造るもの」と思われがちですが、実は住宅の基礎を活用して造られています。基礎を下にさらに掘り下げ、その空間を地下室として利用するため、何かを追加するわけではない、実はシンプルな造りです。
イメージとしては、RC(鉄筋コンクリート)造の構造体を“地中に入れ込んだ”ような形。海外でも基本的に同様の方法で造られています。


土地にはいろいろな形状がありますが、傾斜地と地下室の相性は抜群です。
傾斜地に家を建てる場合、地面をカットして平らにし、擁壁(土留め)を設けるのが一般的です。しかし、この方法では擁壁を造るために土地の一部が使えなくなり、さらに擁壁と建物の両方に費用がかかってしまいます。


そこで登場するのが、“擁壁=建物の一部”という発想です。
“地下室を建物の基礎部分として造り、擁壁の役割を持たせる。”
こうすれば、余分な土地のカットや二重の工事費用を抑えられ、しかも地下空間という新たな活用スペースまで手に入るのです。


こうして出来上がった地下室の活用法はさまざまです。
収納や趣味部屋、防音性を活かしたシアタールームなど、地上では叶えにくい暮らし方が可能に。


もう一つのメリットは、許可申請が一度で済むこと。
擁壁工事と建物工事を別々に計画する場合、それぞれに申請や検査が必要ですが、地下室を基礎として設計すれば、まとめて申請できるため手続きも効率的です。


傾斜地に家を建てるなら、「土地の制約」と捉えるのではなく、「地下室をつくるチャンス」と考えてみませんか。
「限られた土地を最大限に活かし、暮らしの幅を広げる」それが傾斜地と地下室の最良の組み合わせかもしれません。